棚田が有する多面的機能
棚田は、単に米を生産する場だけではなく、国土や自然環境の保全、農村の美しい原風景の形成、伝統文化の継承など多様な役割を果たしていると近年注目されています。これらの役割は「多面的機能」と呼ばれており、ここでは棚田が持つ多面的機能の一部をご紹介します。
棚田は、単に米を生産する場だけではなく、国土や自然環境の保全、農村の美しい原風景の形成、伝統文化の継承など多様な役割を果たしていると近年注目されています。これらの役割は「多面的機能」と呼ばれており、ここでは棚田が持つ多面的機能の一部をご紹介します。
棚田の保全により、土砂崩れを防止・抑制されるとともに、畔に囲まれた田んぼは、集中豪雨の際に雨水を一時的に貯留するなど、洪水の発生を防止する役割を果たしています。また、一時的に貯留された雨水は時間をかけて地下に浸透することで、きれいな水となり、湧水として生活に利用されるほか、下流域の川の流れを安定させる働きがあります。
棚田での農業生産活動により二次的自然が確保されることで、カエル、メダカ、ドジョウ等の水生生物、トンボ、チョウ等の昆虫、トキ等の野鳥など、いわゆる「里地里山」に特有で多様な野生動植物が生息・生育しており、貴重な生態系が維持されています。
棚田は、上の田んぼから下の田んぼへ順番に水を供給することにより、水源の確保と用水の管理がしやすく、稲作の原初的形態の1つとされています。このような景観は、地域で暮らす人々の日々の農業生産活動や生活の営みを通じて形作られてきたものであり、地域の自然、歴史、文化と密接に関わることとからそれぞれに特徴的です。その景観は自然に溶け込み、安らぎを与える原風景として映るとともに、先人の築いた歴史・文化を伝え、日本の生活美を多様に表すものとして文化・芸術の源泉にもなっています。
農業生産活動が生活と一体となって行われてきたことにより、農業と結びついた独自の民俗芸能・伝統文化が発達し、地域独特の有形・無形の伝統文化を守り伝えてきた歴史があります。このため、地域の伝統行事や祭りは、五穀豊穣祈願や収穫を祝うものなど、農業に由来するものが多いことが特徴です。